【硬化油】こうかゆ

 脂肪油に水素を化合させてつくった人造脂肪、大豆油、ナタネ油、鯨油、魚油などの脂肪油は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの液体脂肪酸を多く含み、常温で液体であるが、これらの脂肪酸に水素を化合させて固体のステアリン酸にすると、常温の固体の脂肪になる。

 製造法として、現在多く行われているのは、160〜180℃でニッケル触媒を用いて脂肪油に水素を化合させる方法である。

 ニッケル触媒は硫酸ニッケルの溶液に硅素土を加え、これに炭酸ソーダを加えて炭素ニッケルを硅素土に混ぜて沈殿させ、濾過・乾燥後、水素気流中で330〜350℃に熱してつくる。

 別法として、ぎ酸ニッケルを油中で水素を吹き込みながら250℃付近に熱して分解させてつくる方法も行われている。
 これらのニッケル触媒を油に対して0.1〜0.5%を加え、水素は常庄か数気圧程度の低い圧力の下で反応させる。
 硬化反応は、発熱反応であるから、反応の進行が始まると加熱を要しないばかりでなく、冷却する必要がある場合もある。
 目的とする量の水素を吸収反応させた後に、濾過して触媒を除き、希硫酸などで洗って精製して製品にする。

 硬化油は、脂肪油に比べて生産量の少ない脂肪の製造をおもな目的にしたものであるが、鯨油、魚油などは悪臭の原因になる。
 不飽和酸を、飽和酸に変えて利用価値を増させる目的を兼ねている。

【用途】
 マーガリン(人造バター)やショートニング(パンやケーキをつくる時に使う食用固形脂肪)の製造であるが、セッケン、工業用ステアリン酸(ステアリン)などの製造にも用いられる。
 特有なロウ様な悪臭があるから、食用硬化油は高度の減圧で脱臭精製が必要である。  

特   性
臭い ロウ様な悪臭
酸化 5>
ケンカ化 192〜198
よう素価 17〜24(1g)
融点(℃) 53〜55
色相 APHA150MAX
外観・形状 白色固体

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