二河白道図に寄せて

 中国初唐時代の善導大師の『観無量寿経疏(かんむりょうじゅきょうしょ)』に説かれている比喩で、今まさに往生せんとする者を阿弥陀如来が迎えんとする来迎図の一種がこの「二河白道図」である。
 一人の旅人が西に向かって進むと、突如目の前に南に火の河と北に水の河が現れる。ともに深く底なしである。この二河の中間にはわずか道幅十数センチの白道。だがその道は常に猛火に焼かれ、波が荒れ狂う。振り返れば、群賊悪獣が後方より迫りくる。正に絶体絶命!進むことも能わず、戻ることも叶わず、留まることも許されない。そこで意を決して白道を一歩を踏み出そうとしたその刹那、東の岸から「心を定めこの道を行け。決して災いはない」と勧む声、西の岸からは「私を一心に念じ直ちに来い」と喚ぶ声がする。この旅人とはまさに「あなた」。
「この道を行け」と勧めるはお釈迦様。
「この道を来い」と喚ぶは阿弥陀様。

 「念仏者は無碍の一道なり」(『歎異抄』)。  仏と成るのにすべての道を断たれた凡夫が、「南無阿弥陀仏」とお念仏申すとき、そのか細き道は大道へと変わる。どれだけ煩悩が逆巻こうとも、もう妨げられることは決してない。この道こそが私たちが歩むべき確かな仏道なのである。
 仏教絵解きライブでの「二河白道図」絵解きには、どうか心して耳を傾けていただきたい。この道はあなたのために作られた道なのだから。

寄稿:絵解き座 小山興圓