仏教絵解きライブ活動記録

絵解きライブin西勝寺の報告♪

 2018年7月5日(木)。日本列島は九州から北海道まで前線の活動が活発化した影響を受けて各地で荒天となった。会場となった三重県四日市市の西勝寺さまが建つ地域も朝から雨脚が衰える気配は無かった。今日の天候では折角の準備も空振りに終わるかと思われたが、蓋を開けてみれば開演1時間前の午前9時から参詣間にはすでに聴聞の方が十数人腰を下ろしていた。これほどの条件下にあっても、小生が準備を進める傍ら強い人の流れを感じたのは初めての経験だった。
 午前10時を迎えた頃には、用意した椅子席は満席となっていた。急遽、会場の寺役員の方々が正座器と座布団を最前列の予備スペースにならべて対応するも・・座布団の数が心細くなるのに時間はそれほどかからなかった。本堂に収まりきらない熱気は、蒸し暑さをもろともせず集中力をさらに増してくるのが分かった。これは会の進行にとっても真剣勝負だと覚悟を決めた。大型の行事にはいつも想定外のことが起こる。その時には最善の対処で乗り切ってやろうと会場の様子を隈無く観察し続けた。午後に掛けても参詣の方々は入堂する方の流れが勝っていたのか、ついに雨の中濡れ縁で腰掛けていただくしか場所が無くなってしまった。このような絵解き説教を楽しみにしてくださっている方々に支えられ、三河すーぱー絵解き座の「第五弾!仏教絵解きライブ in 西勝寺」は幕を開けた。

絵解きライブ in 西勝寺の模様です。(1m29s)

【午前の部:初席】板野幾洋氏

 板野氏の十八番である観経曼陀羅絵解き説教。板野式絵解き説教は、限られた時間内で全ての場面を網羅する荒技である。この日も軽快に挑戦が始まる! これまでの経験から軽妙に各段に強弱・重軽をほどこして話を展開してゆく。最後の山場は、「上より此のかた・・よく定散二善の門をとくと雖も・・云々」という行だ! 同氏の仏道に対する取り組みの原点とも受け止められる語り口は、この日も聞き手のこころを捕らえたと感じた。機会がありましたら、どうぞ板野式・観経曼陀羅の絵解き説教に法縁を結んで戴きたいと思う。

【午前の部:第二席】野田慈勝氏

 野田慈勝氏の「仏涅槃図絵解き」は安定感抜群であった。会場の西勝寺さまが浄土真宗系の寺院内「本派」であることを自然の流れにのせて聴門の方々に確認する。話題が展開したところで、先に確認した「本派」という属性が枕としてだけでなく複線となっていたことにも唸らされた。念仏の勧めに入る切っ掛けがメジャーリーグで活躍し、今季地元の中日ドラゴンズへ移籍した松阪大輔投手の話題。地元愛から松阪派に入れ込んだような印象を植え付けて・・。「私・・。こうは言っておりますが、大谷派の者であります。」会場の熱気が和みへと変わった瞬間だった。内容を詳しく聴聞されたい方は、是非とも同氏の法縁に足を運んでいただきたい。

【午後の部:第三席】村上英俊氏

 村上氏が説くことにおいて最大の意味を発揮する絵伝が「一光三尊佛絵伝」。真宗高田派の成り立ちと深く関わってくる聖徳太子と善光寺秘仏「一光三尊佛」。全部で四幅からなるこの絵伝は、前三幅が難波の浦に投棄されるも輝かしく世に復活を遂げる百濟より伝来した仏像をめぐる壮大な物語。時に想像力を掻き立て、時に疑心を抱かせながら日本史上にエポックメイキングを投じてきた。村上氏の語る同絵伝は、後にアジア全域を巻き込み文明の道と称され、そこで主たる文化的産物として交流した仏教盛衰の歴史を先人の浪漫と共に味わうことができるものだ。東の果てにて結実した日本仏教の側面を朗々と語り上げる同氏の絵解き説教に一度出遭って戴きたいと思うばかりである。

【午後の部:第四席】沓名奈都子氏

 今回、沓名奈都子氏が特に拘って絵解き画材として調査・研究を重ねたのがこの仏教絵画である。全三幅からなる岡崎市萬徳寺所蔵の「二河白道図」である。通常の二河譬図は一構図によって成っていることが多い。それを今回の絵図では三つの場面に描き分けているのが特徴である。特に注目されていた構図は、絵図の中にある無記名の金泥にて仕上げられた札銘の部分。この部分は、通常の二河白道図では「釈迦如来」もくしは、真宗系に特化すれば釈迦・親鸞聖人となるのが通常である。それをこの絵図を制作した萬徳寺の住職は先述のように表現しているのである。この意図を「釈迦の金言」を表しているのだと沓名氏は詳解する。すなわち「経典」のことだ。そして無記の札銘となっている理由として、対機説法を旨とする釈迦如来の35年に渡る伝道は多岐にわたり、どの境遇で諭され教えられ言葉に出遭うのかで弟子によって様々であると・・。だから、貴方の問題をそこに投影してこの図を拝しなさいと同氏は勧められた。次回、沓名氏の二河白道図絵解き説教に出遭うのはあなたかもしれない!

【午後の部:千秋楽】梛野明仁氏

 梛野明仁氏が座長として法座をまとめ上げる。画材は親鸞聖人絵伝の四幅中の第一幅を取り上げた。よくこんな声を巷で耳にする。病院へ行けば「加齢に伴う弊害です」と。それも言われる相手が、20代もしくは30代の若い医師からだと返す言葉も気力も失ってしまう。少なくとも人生の機微という点から言えば患者である側の方が経験値が深い。その言葉で片付けられるならばここ(病院)へは来ない。全くその通りだと最近よく分かる。そこで生きる人の情緒をくみ取って掛ける言葉がある。合理的な判断の上に情緒を加えて言葉が生きてくる。梛野氏が語る出家の場面を聞くに付けていつも小生の心にわき上がるエピソードだ。時代は、天候不順から凶作、飢饉・飢餓と疫病による人口の減少を詳解する流れ。東日本大震災の後から同氏が抱く問題を深くえぐり出して説き上げるものだ。その時代の人々の情緒を慮り合理的な資料を加味して言葉にすると、絵伝の伝承が粋なものとなって蘇るのだ。是非、梛野氏の絵解き説教に出遭う機会があれば耳を傾けて戴きたい一段である。そんな一席をもって今回の絵解きライブは幕を降ろした。

文責:左右田

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